堰堤どうでしょう 【品木ダム】
品木ダム (群馬県) 【しなきだむ】

(2011年11月4日訪問)
【データ】
所在地 : 群馬県中之条町
河川名 : 利根川水系湯川
型式 : 重力式コンクリートダム
堤高(ダムの高さ) : 43.5メートル
堤頂長(ダムの長さ) : 106メートル
ダムカード : あり
駐車場 : それらしき場所はあり
公式ホームページ : http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/index.html
中之条町六合地区の特産品 : 花いんげん、舞茸 など
【独り言】
学生時代はとにかく理科が苦手でした。
今でも覚えてる事といえばせいぜい“フレミングの左手の法則”と、
pH(ペーハー)は“3に近い方が酸性”っていうこと位ですね(笑)
【どんなダム?】
『吾妻川を守る為…使命を帯びた今日も頑張る特殊なダム』
…ダムの最もポピュラーな役割はやはり『洪水を貯め下流域を守る』ことだと思うのですが、
今回紹介する群馬県中之条町にある品木ダム(国土交通省管理・1965年竣工)は、
洪水を貯める為のダムではありません。
では一体何の為に造られたダムなのか?
まずはこちらの写真をご覧下さい。

※品木ダム『環境体験アミューズメント』展示品
…こちらは日本の名湯・草津温泉を経由し品木ダムへと注ぐ『湯川』の水に、
五寸釘とコンクリートを浸けておいた際の実験なのですが、
これを見て湯川がどういう性質を持った川かおわかりでしょうか?
そうです!この川は強酸性の水が流れているんですね。
“恋の病以外は何でも治る”と謳われる草津温泉…「酸性湯で大いに結構じゃない」と思われますが、
もしこの水が下流域にまでそのまま流れてくると考えたらちょっと怖いですよね?
実際、この川から合流する『吾妻川』はかつて“死の川”とまで呼ばれ、
魚や昆虫が住むことはおろか、農作物や周辺の護岸設備にも大きな影響が出ていたそうです。
「このままでは吾妻川の水が使えない!このままでは下流域の生活にも影響が出続ける!」
「とにかくこの水を何とかしなくてはならない!」
…そこで始まったのが『中和事業』(→酸性の水を中性に近づけること)なのですが、
具体的には、
“上流より石灰(アルカリ質)を水に溶かした『石灰ミルク』を投入し水質を改善させよう”
という話でございます。
ただこの方法。一つ問題があって、
それは“中和の際に化学反応によって作られる中和化合物が多く残る”という点。
…さて前置きが長くなりましたが、そこで登場したのが品木ダム!
品木ダムの役割は、
『中和事業の際に生成された中和化合物を貯めておく』
ということなんですね。

…具体的な“流れ”はこちらを見てもらった方がわかり易いかな?
さっきの話では湯川のみ触れましたが、
実は品木ダムの上流には硫黄質の白根山がそびえ、
そこから流れ込む強酸性の『谷沢川』『大沢川』でも同様に中和事業が行われています。
ちなみにpH2はレモン水とほぼ同じで、魚が住める為の水はpH6~7と言われているそうです。

※品木ダム水質管理所
…中和事業は24時間365日、休むことなく行われています。
ここはダムより車で数分…少し離れた場所にあるのですが、
すぐ横には『草津中和工場』と、
中和事業についてわかり易く学べる『環境体験アミューズメント』が併設されています。
ダムカードもこちらの管理所でゲットできますよ。

※草津中和工場・石灰ミルク投入風景
…ここから川を下りダムに水が注ぐまでの間、徐々に中和が進んでいく訳です。
思いの外にチョロチョロと投入されていたのですが、
この量でも休むことなく続いている訳で、その量は一日約50トンにまで至るそうです。
ではそのまま湯川を下り、品木ダムの方を見ていきましょう!

※ダム湖(上州湯の湖)の様子
…草津中和工場・香草中和工場それぞれより石灰ミルクを投入された湯川及び谷沢川・大沢川は
ここ『上州湯の湖』で合流します。
そしてこのダム湖内でも中和は進み、
強酸性だった水はpH5~6の弱酸性…ほぼ中性にまで改善されています。

※ダム湖の様子2
…この網場にひっかかってる白いのが『中和化合物』なのかな?
ただ3つの川より一日約60トンもの石灰ミルクが流れ込む品木ダム。
中和化合物を貯めておくだけではキリがないので、当然それを取り除く作業も日々進められています。
実際このダムでは中和化合物に加え、
通常流れ込む土砂も相まって堆砂率もかなり高いとのことです。

※浚渫船の様子
…この中和化合物や土砂を取り除く作業を『浚渫』(しゅんせつ)というそうです。
川を守るダムを守る為の作業ですね☆

※堤体の様子
…ところで何故この記事のトップ画はダムカードなのか?
それはご覧の通り堤体(下流側)自体はよく拝見することができなかったからです(笑)
まぁ堤体自体はそこまで大きくありませんね。
“洪水を貯める為のダム”ではないですが、
満水位を超えて溢れ出してしまってもアレなので(一応)ローラーゲートは2門構えています。
またこのダムは『中和化合物の蓄積』の他に中和された水を利用しての『発電』も行われています。

※天端の様子

※堤体直下の様子
…天端は自動車による通行可。ダム直下はご覧の感じ。
全体的にコンクリートダムとしては小型の分類に入ると思いました。

※品木ダムより下流・吾妻川と小さな堰
…中和事業以降は吾妻川が抱えていた問題も徐々に改善され、
魚も住むようになり、こういったコンクリートの治水設備も問題なく整備されるようになりました。
“死の川”とまで言われ恐れられ続けた吾妻川ももう過去の話。
美しく活気ある水の風景…もしかしたら現在では当たり前のような風景になっているかも知れませんが、
その背景には上流で日々休まずに頑張っている人・ダムがある。
コンクリートと人、どうにか共生できないものか?
移り変わる必要は絶対なのか?
…少なくともこの地では共生していたように見えました。
【…そんな品木ダムへのアクセスはこちら☆】

(2011年11月4日訪問)
【データ】
所在地 : 群馬県中之条町
河川名 : 利根川水系湯川
型式 : 重力式コンクリートダム
堤高(ダムの高さ) : 43.5メートル
堤頂長(ダムの長さ) : 106メートル
ダムカード : あり
駐車場 : それらしき場所はあり
公式ホームページ : http://www.ktr.mlit.go.jp/sinaki/index.html
中之条町六合地区の特産品 : 花いんげん、舞茸 など
【独り言】
学生時代はとにかく理科が苦手でした。
今でも覚えてる事といえばせいぜい“フレミングの左手の法則”と、
pH(ペーハー)は“3に近い方が酸性”っていうこと位ですね(笑)
【どんなダム?】
『吾妻川を守る為…使命を帯びた今日も頑張る特殊なダム』
…ダムの最もポピュラーな役割はやはり『洪水を貯め下流域を守る』ことだと思うのですが、
今回紹介する群馬県中之条町にある品木ダム(国土交通省管理・1965年竣工)は、
洪水を貯める為のダムではありません。
では一体何の為に造られたダムなのか?
まずはこちらの写真をご覧下さい。

※品木ダム『環境体験アミューズメント』展示品
…こちらは日本の名湯・草津温泉を経由し品木ダムへと注ぐ『湯川』の水に、
五寸釘とコンクリートを浸けておいた際の実験なのですが、
これを見て湯川がどういう性質を持った川かおわかりでしょうか?
そうです!この川は強酸性の水が流れているんですね。
“恋の病以外は何でも治る”と謳われる草津温泉…「酸性湯で大いに結構じゃない」と思われますが、
もしこの水が下流域にまでそのまま流れてくると考えたらちょっと怖いですよね?
実際、この川から合流する『吾妻川』はかつて“死の川”とまで呼ばれ、
魚や昆虫が住むことはおろか、農作物や周辺の護岸設備にも大きな影響が出ていたそうです。
「このままでは吾妻川の水が使えない!このままでは下流域の生活にも影響が出続ける!」
「とにかくこの水を何とかしなくてはならない!」
…そこで始まったのが『中和事業』(→酸性の水を中性に近づけること)なのですが、
具体的には、
“上流より石灰(アルカリ質)を水に溶かした『石灰ミルク』を投入し水質を改善させよう”
という話でございます。
ただこの方法。一つ問題があって、
それは“中和の際に化学反応によって作られる中和化合物が多く残る”という点。
…さて前置きが長くなりましたが、そこで登場したのが品木ダム!
品木ダムの役割は、
『中和事業の際に生成された中和化合物を貯めておく』
ということなんですね。

…具体的な“流れ”はこちらを見てもらった方がわかり易いかな?
さっきの話では湯川のみ触れましたが、
実は品木ダムの上流には硫黄質の白根山がそびえ、
そこから流れ込む強酸性の『谷沢川』『大沢川』でも同様に中和事業が行われています。
ちなみにpH2はレモン水とほぼ同じで、魚が住める為の水はpH6~7と言われているそうです。

※品木ダム水質管理所
…中和事業は24時間365日、休むことなく行われています。
ここはダムより車で数分…少し離れた場所にあるのですが、
すぐ横には『草津中和工場』と、
中和事業についてわかり易く学べる『環境体験アミューズメント』が併設されています。
ダムカードもこちらの管理所でゲットできますよ。

※草津中和工場・石灰ミルク投入風景
…ここから川を下りダムに水が注ぐまでの間、徐々に中和が進んでいく訳です。
思いの外にチョロチョロと投入されていたのですが、
この量でも休むことなく続いている訳で、その量は一日約50トンにまで至るそうです。
ではそのまま湯川を下り、品木ダムの方を見ていきましょう!

※ダム湖(上州湯の湖)の様子
…草津中和工場・香草中和工場それぞれより石灰ミルクを投入された湯川及び谷沢川・大沢川は
ここ『上州湯の湖』で合流します。
そしてこのダム湖内でも中和は進み、
強酸性だった水はpH5~6の弱酸性…ほぼ中性にまで改善されています。

※ダム湖の様子2
…この網場にひっかかってる白いのが『中和化合物』なのかな?
ただ3つの川より一日約60トンもの石灰ミルクが流れ込む品木ダム。
中和化合物を貯めておくだけではキリがないので、当然それを取り除く作業も日々進められています。
実際このダムでは中和化合物に加え、
通常流れ込む土砂も相まって堆砂率もかなり高いとのことです。

※浚渫船の様子
…この中和化合物や土砂を取り除く作業を『浚渫』(しゅんせつ)というそうです。
川を守るダムを守る為の作業ですね☆

※堤体の様子
…ところで何故この記事のトップ画はダムカードなのか?
それはご覧の通り堤体(下流側)自体はよく拝見することができなかったからです(笑)
まぁ堤体自体はそこまで大きくありませんね。
“洪水を貯める為のダム”ではないですが、
満水位を超えて溢れ出してしまってもアレなので(一応)ローラーゲートは2門構えています。
またこのダムは『中和化合物の蓄積』の他に中和された水を利用しての『発電』も行われています。

※天端の様子

※堤体直下の様子
…天端は自動車による通行可。ダム直下はご覧の感じ。
全体的にコンクリートダムとしては小型の分類に入ると思いました。

※品木ダムより下流・吾妻川と小さな堰
…中和事業以降は吾妻川が抱えていた問題も徐々に改善され、
魚も住むようになり、こういったコンクリートの治水設備も問題なく整備されるようになりました。
“死の川”とまで言われ恐れられ続けた吾妻川ももう過去の話。
美しく活気ある水の風景…もしかしたら現在では当たり前のような風景になっているかも知れませんが、
その背景には上流で日々休まずに頑張っている人・ダムがある。
コンクリートと人、どうにか共生できないものか?
移り変わる必要は絶対なのか?
…少なくともこの地では共生していたように見えました。
【…そんな品木ダムへのアクセスはこちら☆】
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